私たちは北海道の下川町で、バイオ炭を施用して作物を栽培しています。

バイオ炭の農地施用は大気中のCO2を除去する有効な手段として国際的に認められており、土壌改良にも役立ちます。

地域資源を最大限に生かしながら、持続可能な食料生産を行う。それが私たちの夢です。

バイオ炭とは

バイオ炭の定義は「燃焼させない水準に管理された酸素濃度のもと、バイオマスを350℃以上で加熱して得られる固形物」。

よく炭と聞いて思い浮かべる木炭も、バイオ炭に該当します。木に限らず、竹、もみ殻などの農業残渣、家畜糞尿など、ありとあらゆる生物由来の資源がバイオ炭の原料になります。

※バイオマス…再生可能な生物由来の有機物(化石燃料は除く)

バイオ炭が地球を冷やす仕組み

植物は光合成でCO2を吸収する

木を例に説明しましょう。木は光合成で大気中の二酸化炭素(CO2)を吸収し、有機物に変換して体に蓄積します。これを炭素固定といいます。

自然状態では、吸収したCO2はいずれ放出されてしまう

やがて木が死ぬと、微生物によって有機物が分解され、固定されていた炭素がCO2となって放出されます。木が生まれてから死んで分解されるまでの全プロセスで、CO2の吸収量と放出量は同じになります。

バイオ炭にすれば、CO2が出ないように地中に閉じ込められる

木をバイオ炭にすると、炭素原子が互いに強く結合しあって「難分解性炭素」となり、微生物が分解しにくい安定した構造になります。

このバイオ炭を農地に埋めることで、炭素を半永久的に土壌中に貯留し、大気中からCO2を除去することができます(炭素貯留)。

バイオ炭の農地施用によって大気中のCO2を除去し、地球温暖化の防止につなげることができます。

バイオ炭の畑から生まれた製品

北海道下川町産小麦粉

バイオ炭を施用した農地で栽培された小麦のみを個別に収穫・製粉しました。”幻の小麦”とも呼ばれる強力粉の「はるゆたか」、国産薄力粉の代表品種である「きたほなみ」の2種類のラインナップです。

小麦粉1kgにつきカーボン・オフセット1kg分が付加され、ご購入者様の日常生活で排出されるCO2が削減されます(小麦の栽培時のバイオ炭の農地施用によるCO2削減量から認証されたJ-クレジットを活用しています)。

下川手延素麺 珊瑠の糸

日本最北端の手延べ麺の里、北海道下川町のはるお製麺で職人の手で造られた、小麦の味わい豊かな素麺です。

原料の小麦粉には、下川町でバイオ炭を施用した畑から収穫された「はるゆたか」を100%使用しており、素麺をお召し上がりいただくことで環境保全型農業への取組を応援することができます。

私たちの取り組み

道産未利用材を原料にしたバイオ炭を施用しています

森林を伐採すると、細すぎたり曲がりや腐りがあって製材としては利用できない木材が出てきます。道内の森林から出たこのような未利用材を原料として、下川町で製造されたバイオ炭を使用しています。

バイオ炭を施用した畑で小麦を栽培しています

日本での小麦の自給率は15%程度と低く、ほとんどが輸入小麦です。私たちは下川町の協力農家の畑にバイオ炭を施用し、小麦を栽培しています。環境への配慮とともに、「自分たちで食べるものを自分たちで作る」という本来の食料供給のあり方を実現したいと考えています。

J-クレジットを創出しています

J-クレジットは、CO2等の温室効果ガスの排出削減量や吸収・除去量をクレジットとして国が認証する制度です。

バイオ炭の農地施用は2020年にJ-クレジットの方法論に追加され、2022年に初めて247t-CO2のクレジットが承認されました。私たちもそのクレジットの一部にあたる170t-CO2を創出しており、これは全体の69%に相当する全国第1位の創出量です。

バイオ炭と土壌

バイオ炭のメリットはCO2除去だけではなく、以下のような土壌改良の効果があります。

  • 保水性・保肥性の向上(細孔による吸着)
  • 排水性・通気性の向上(団粒構造の形成)
  • 菌根菌などの有用微生物の定着・増殖
  • 酸性土壌の中和(アルカリ性)

バイオ炭は小さな穴が無数に空いた多孔質な構造を持ち、それがこのような特性に寄与しています。

※上記の特徴は一般的な内容であり、バイオ炭の原料や製造方法によって違いがあります。

バイオ炭あれこれ

炭は古来からの土壌改良材

日本では古くから籾殻くん炭などの炭が農業に利用されてきました。江戸時代初期の農業書にも炭の利用の記載があり、また地力増進法(昭和60年)によって木炭が土壌改良資材として定められています。

海外では、南米のアマゾン領域に「テラ・プレタ」と呼ばれる黒く肥沃な土壌が広く分布しており、これは紀元前から長きにわたって先住民が木材の炭化物や有機物を埋め込むことで形成されたことがわかっています。元々は農業に適さない酸性土壌であるのに対し、このテラ・プレタは何度も連作できる高い地力を持ち、世界がバイオ炭の土壌改良効果に着目する大きなきっかけとなりました。

バイオ炭への素朴な疑問

バイオ炭を作るときにCO2が排出されるのではないですか?

確かにバイオ炭製造時には、表面の空気に接する部分では炭素が酸素と反応してCO2やCO(一酸化炭素)などが発生しますが、適切な方法・装置であれば炭素の多くが残存します。炭化は低酸素条件下での熱分解で、「燃焼」とは異なります。

逆に、植物の固定した炭素は長期的に見れば結局はCO2として再び大気放出されてしまいます。これはCO2の収支だけで考えれば燃焼しているのと同じことです。

ですので、バイオ炭の製造時に発生する少量の温室効果ガスはあったとしても、農地施用によるCO2除去効果はそれよりずっと大きなインパクトがあるのです。

バイオ炭を施用すると農作物の収量が増えたり美味しくなったりするのですか?

元々の土壌の状態や、栽培する作物の種類、バイオ炭の種類、気候などによって、農作物への効果は大きく異なり、バイオ炭をこのくらい入れると収量が○倍増えるというような明確な方程式はありません。一部では収量が増えた、果物の甘みが増した、という報告もありますし、逆に収量が減ったという論文もあります。

効果が明確にスピーディに見える化学肥料とは異なり、バイオ炭の影響には土壌の物理性や微生物環境も含めた複雑なメカニズムがあるはずで、今後の学術的な知見が期待されるところです。

当社では、バイオ炭を施用するメリットをまずは「CO2除去による環境貢献」と「石灰等のアルカリ性資材の代替」と捉え、長期的に土壌や農作物の変化をウォッチしていきたいと考えています。

バイオ炭あれこれ

バイオ炭はCO2を「除去」できる数少ない身近な存在

カーボンニュートラルの実現

いま世界は、地球温暖化にともなう気候変動を抑えるためにカーボンニュートラルな社会の実現へと動いています。

カーボンニュートラルとは、CO2等の温室効果ガスの排出量と吸収・除去量が等しく、±0になる状態です。どんなに省エネに励んでも排出をゼロにはできないので、排出はしつつCO2を減らす努力もして実質ゼロにしようという概念です。

人間の出すそもそものCO2を減らす「削減」

再生可能エネルギーに転換しよう、節電しよう、なるべく自家用車を使わないようにしよう、リサイクルしよう…、こういった取組みは、CO2を出すことには変わりないけれどその量を減らそうという「削減」です。

森林による「吸収」は可逆的

木をたくさん植えて森を増やして、CO2を減らそう。これは「吸収」です。森林は重要なCO2吸収源であり、人間活動による熱帯雨林の減少は地球温暖化の大きな原因です。

ただ、若い森林はCO2をどんどん吸収して成長する一方、成長期を過ぎると呼吸量が増え、差し引きのCO2吸収能力は低下していきます。さらに、木が死んで分解されたり、木材になったものが廃棄・焼却されると、再びCO2が排出されます。ですので、森林によるCO2吸収は短期的で可逆的な不確実さがあります。

今、人類に求められる「除去」

「削減」と「吸収」ではカーボンニュートラルを達成できないので、いま世界中でCO2を「除去」する技術が盛んに議論されています。

例えば、大規模な機械装置で大気中や工場の排気からCO2を回収して除去し、地中深くに貯留する技術。こういった手法は、工業的に炭素貯留できる方法として期待を集めていますが、まだ開発途中で技術的に不確実な面があり、何よりも莫大な資金が必要です。

より自然に近い手段でCO2を除去できる技術がバイオ炭の農地施用です。植物の炭素固定能力をベースに、炭化や農地施用というプロセスを経ることで地中へと半永久的に炭素を貯留できます。人類が昔から利用してきた「炭」が、最新の巨大なCO2回収除去装置と同じ役目を、より確実に、より低コストに、より人の営みに近い場所で果たすのです。

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